2013年11月2日土曜日

初心忘るべからず

社会人の仲間入りをしたばかりの若人たちに先輩として贈りたいのは、
やはり、世阿弥の「初心忘るべからず」という言葉です。

松下幸之助氏などは、この言葉を入社時の感激や喜びを忘れるな、
というように用いられており、それも大切なことなのですが、
伝えられている真の意味は”初志を貫徹せよ”ということです。

したがって、入社後二、三年を経て、自分の夢と現実のギャップに
悩んでいる人たちや、ベテランといわれながらマンネリズムに
陥っている人たちにも、等しく贈りたいものであります。

人は誰でも、社会へ船出した時とか、新しい仕事に就いた時などは、

自分は将来こうありたいという夢なり目標を持っているものです。

そして、新しい世界に深い興味を抱き、何でも学び取ろうという素直さや
情熱を持っています。しかしそのうちに、自分の能力に疑問を感じたり、
ビジネスの荒波にもまれた結果「日暮れ腹減り」といわれるような
空しい生活に陥ってしまう危険性があります。

しかし、それではせっかく一度だけ授かった人生が、
あまりにももったいなく、常に初心を貫徹するという強固な意志を持ち続けることが肝心です。

「継続は力なり」といわれるように、それだけの力を持ち続けることが
できるかどうかが、わたくしたちの人生を決める岐路だと思うのです。

では、初志を貫き通すための極意は何かというと、これも世阿弥

「時分の花を咲かせよ」という言葉が参考になると思います。

の意味は”背伸びをして実力以上に見せようとすることなく、
その時々の芸の仕方を目いっぱいやりなさい”ということで、
二十歳には二十歳の、四十歳には四十歳のそれぞれの良さがあるのだから、 
この時々に応じた自分の力を発揮することが美しいのだ、と教えているのです。

初志と現状とのへだたりを嘆き、とても駄目だと落ち込んでしまうのではなく、
新人は新人として、中堅は中堅として、ベテランはベテランとして花を咲かす
心構えでいれば、自分の人生は彩り豊かなものになるでしょう。

芸やスポーツに限らず、ビジネスにおいても、これでよいという境地など決してありません。


たとえば、挨拶とか電話の応対一つとってみても、
ベテランでさえ100%これで良かったというケースはほとんどないものです。

それ故に、下手は下手なりに、新人は新人なりに、
精いっぱい自分の仕事に打ち込むという姿勢が美しいのです。

自分を幸せにするかどうかは、やはり自分の心が決めるものだと思います。


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