2014年5月10日土曜日

IE欠陥騒動 ネットで「情報格差」を笑う人々、埋める人々

「IEって何?」-。米マイクロソフト(MS)のインターネット閲覧ソフト「インターネット・エクスプローラー(IE)」に欠陥が見つかった4月末、ネッ トではIT知識に乏しい人々の混乱ぶりが相次いで報告された。職場のアナログな上司などを揶揄(やゆ)する声が目立つ中で、一連の騒ぎは根深い「情報格 差」の現状も浮き彫りにしたようだ。

 「職場で『とりあえずインターネットの利用を控えるように』という指示が出た」「なぜか『ヤフーは危ないから使わないほうがいい』という話になり、みんながIEでグーグル検索するようになってる」

 IEに深刻な脆弱(ぜいじゃく)性が見つかり、米国土安全保障省が注意喚起したとの報道が広まった4月末。ツイッター上には、対応に追われる職場での混乱に戸惑う投稿が相次いだ。

 中にはIEを含むネット閲覧ソフト(ウェブブラウザー)と、ヤフーなどの検索エンジンとを混同した事例も報告され、「助言しようと思ったけど、そもそも 『ブラウザー』という言葉が通じない」といった“悲鳴”も。ブラウザーの知識を「基本中の基本」と見なしていた多くのネットユーザーにとって、相次ぐ混乱 報告は「初心者」との知識ギャップを改めて突きつけるものだったようだ。

 ◆「年上世代」に批判の声

 ブラウザーには問題となったIEのほかにも米グーグルの「クローム」や米モジラ「ファイアフォックス」などの種類がある。ただ、IEはウィンドウズの標準ブラウザーという地位もあり、多くの企業や団体がIEを前提としたシステムを採用。こうした環境も混乱を後押しした。

 一方、ネットでは今回の騒動を受け、「年配層って本当、説明しても通じないことが多い」などとして、IT知識に乏しい「年上世代」をなじったり嘲笑する 声も出ている。そもそもネットでは、「情報強者/弱者」といった表現で知識の多寡が区分けされ、特に「弱者」に対して厳しい視線が注がれてきた。

 家電店で顧客が「インターネットください」と注文したという逸話は今も笑い話として語り継がれている。また今年4月には、テレビ朝日系「報道ステーショ ン」の古舘(ふるたち)伊知郎キャスターが、MSのプレゼンテーションソフト「パワーポイント」について「知らない」と発言したことが大きな話題になり、 「無知すぎる」と批判が集まったりもした。

 ◆「嘲笑する空気」に疑問も

 もっとも、こうした風潮には「知らないことを『そんなことも知らないの?』って嘲笑する空気は好かんなあ」といった疑問も出され、最低限のIT教育の必 要性を訴える声も上がっている。また、ブラウザーを車に例え、「IEという車に不具合が出たから、車を乗り換えましょうって感じ?」などと、初心者向けの かみ砕いた説明を模索する試みもみられた。同時に、「車のように仕組みやシステムなんて知らないけど使っていることはよくある」「興味なきゃブラウザーな んて別に何でもいいもんね。車は走ればいい、くらいのレベルで」などと、身近なものに例えることで、「上級者」が歩み寄ろうとする動きもあった。

 車と違って“無免許”でも利用できるため「危険」にさらされる人々も多いネット。今回のIE騒動は、初心者にとっても上級者にとっても、互いを通じて学ぶことの意義を再確認させる一面を持っていたのかもしれない。(三)

【用語解説】IEの脆弱(ぜいじゃく)性

 MSは4月下旬、IEのバージョン6~11に、外部から侵入を受ける恐れのある欠陥が見つかったと発表。MSは外部から情報を持ち出せないようにする 「拡張保護モード」の設定などを呼びかけ、米国土安全保障省などもIEの使用を控えるよう注意喚起した。MSは5月1日(日本時間2日)、IEの安全性を 高める修正プログラムの無償配布を開始した。

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