2014年5月7日水曜日

月次契約数発表中止の裏に「iPhone6」の存在

携帯電話大手3社が契約数の月次発表を3月で中止した。その裏には、米アップルが今秋にも発売するとみられている「iPhone(アイフォーン)6」(仮称)の存在があると、業界で取沙汰されている。

 3社が月次発表を中止することになったのは、電気通信事業者協会でソフトバンクが「契約数の発表をやめたい」と言い出したのがきっかけ。最終的には、総 務省の四半期ごとの集計に歩調を合わせて四半期決算発表の際に公表することになったが、ソフトバンク担当者は当初、データ非公表を主張したという。

 毎月の純増数でトップを多く獲得し、3社のなかで最もシェアを伸ばしているソフトバンクが、なぜ販促にも役立つ契約数公表を渋ったのか。ある調査会社は「今秋のiPhone6発売に備えた戦略の可能性が高い」と指摘する。

 これまでに比べて販売が不振といわれる現行の「iPhone5s/5c」だが、そのせいか、市場には「5」や「4S」、さらにその前の「4」の利用者もかなり多い。

 KDDIは2011年10月に4Sを発売したが、当時はiPhone販売で実績のあるソフトバンクが圧倒的に強かった。「4Sと5の現在のシェアは7対3でソフトバンクが多いのではないか」(KDDI)とみている。

 スマートフォン(高機能携帯電話)の売れ行きが鈍化するなか、6が発売されたら、ソフトバンクが大量に抱える5、4S、4の既存iPhoneユーザーが 有望購買層となるのが確実。しかし、現在、iPhoneはNTTドコモを含む3社が販売しており、もはやソフトバンクは先行のうまみを享受することはでき ない。

 米国でスプリントに続き、TモバイルUS買収ももくろむソフトバンクにとって、利益率の高い国内市場は大事な貯金箱。2兆円ともいわれるTモバイルUSの買収資金確保のためにも本体の収益悪化は避けたいところだ。

 2006年に携帯電話事業参入以来、9割以上の確率で月次の純増トップを維持してきたソフトバンクだが、「6発売を機に、転入超過を続けてきた番号持ち 運び制度(MNP)による事業の乗り換え契約数が転出超過に転落しかねない」(前出調査会社)。旧型モデルのユーザーは値引きキャンペーンなどによっては ドコモやKDDIにも大量に流れる懸念があるからだ。

 1人当たり月間売上高は、最も高いドコモに比べてソフトバンクは劣勢が続く。体力勝負を避けたいソフトバンクにとって、販促費を注ぎ込んだ顧客争奪戦を回避するためには、契約数公表をやめるのが一番費用対効果の効果の高い手段といえる。

 ソフトバンクは、月次発表中止の理由については、「過当競争の正常化」としか説明していないが、競合の携帯電話事業者からは「散々、純増トップをアピールしてきたのに、都合が悪くなると『イチ抜けた』と言い出すのはいかがなものか」との批判も聞こえてくる。

 月次発表中止の裏にソフトバンクの「6危機」があるのか、半年後の顧客争奪戦が注目されそうだ。

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