米ネット通販最大手のアマゾン・ドット・コムが鳴り物入りでぶち上げた小型無人機による宅配サービスの実現が危ぶまれている。現在は軍事目的に限定されて
いる無人機の商業利用を来年秋にも解禁する方向で検討している米連邦航空局(FAA)が、宅配サービスについては、危険性が高いことから、認可しない可能
性を示唆したためだ。FAAは来年秋までに商業利用に関するガイドラインを策定する方針だが、夢の空飛ぶ宅配便は“離陸”できない可能性が高まっている。
「2007年以降、米国では無人機の商業利用は違法であり、新たなルールが決まるまで、その事実は変わらない。趣味などで122メートル以下を飛ぶ無人機は合法だが、商業利用は禁止されている」
FAAは、23日に公開した「無人機の飛行に関する規制とその解釈」に、改めてこう明記。違法な商用サービスの例として、わざわざ「有料による小包の配
達」を挙げた。15年秋に予定する商用解禁時に、宅配サービスを禁止するかどうかについては言及していない。ただ、米メディアは、FAAが新ルールの策定
前にあえて禁止事例として挙げたことから、「実現は困難になった」と伝えている。
アマゾンは昨年12月、夢の空飛ぶ宅配サービス「アマゾン・プライム・エア」の実験映像を公開。アマゾンのジェフ・ベゾスCEO(50)はテレビ番組に出演し、FAAによる商用解禁に合わせて、サービスを開始できると表明していた。
プライム・エアは、GPS(衛星利用測位システム)を搭載した小型無人機を使い、物流センターから半径16キロ以内の場所なら注文から30分以内の配達が可能。搭載できる荷物は最大2.3キロで、アマゾンが取り扱っている商品の86%が対象になるという。
米メディアによると、ベゾス氏は株主への年次書簡で「無人機は現在、第5、6世代モデルの飛行実験を行っており、すでに第7、8世代モデルの設計作業に
入っている」と説明し、準備が着々と進んでいることを強調していた。アマゾン以外にも、米ドミノピザも英国法人が開発した「ドミコプター」によるピザの宅
配サービスの映像を公開するなど、多くの企業が無人機の利用を検討している。
商用解禁によるビジネスチャンスや経済波及効果への期待が高まる一方で、無人機の安全性に対する不安も広がっている。実際、FAAは先月、フロリダ州の空港近くで民間航空機と正体不明の無人機があわや衝突寸前のニアミスを起こしていた事例を公表した。
ニアミス事例に続く、今回の文書公表は、FAAが多数の無人機が米国の空を飛び回ることの危険性に配慮し、商業利用の認可に慎重になっていることの表れ
といえそうだ。FAAは今月10日、初の商業利用として石油大手BPがアラスカ州内の施設の維持管理のために無人機を利用することを認可した。一方で、米
国立公園局は20日、安全性への懸念から国立公園での使用を禁じる方針を打ち出している。
慎重姿勢を強める当局に対し、ロボット工学の専門家であるワシントン大学のライアン・カロ准教授はニューヨーク・タイムズ紙に「無人機はセンサーや信号を使って飛ぶため人間がコントロールするよりずっと安全だ」と反論している。
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