スマートフォン(高機能携帯電話)を長時間使用する「スマホ依存」などが問題となる中、学校指定の制服ならぬ「制携帯」を導入し、注目を集めていた須磨学
園中学・高校(神戸市須磨区)が昨年導入した「制スマホ」を、わずか半年間で従来型の携帯電話に戻していたことが15日、分かった。ゲームに没頭する生徒
が増えたためで、学校側は「想定外の事態」と頭を悩ませている。
■昨年4月に採用
須磨学園が制携帯を導入したのは平成22年。携帯電話を一律に規制するのではなく、正しい使用方法や危険性を学ばせることが目的で、悪質サイトのフィル
タリングや閲覧時間の制限をかけた学校仕様の携帯電話(従来型)を支給。学校がサーバーを管理し、ネット上でのいじめの疑いがあった場合にメールや通話履
歴を監視するなど一定の効果をあげてきた。
一方でスマホの普及を受け、昨年4月には高校1年生約520人分にスマホを採用。不要なゲームアプリをダウンロードできないよう、使用制限をかけられる携帯電話会社推奨のアプリを使い、「万全を期したつもりだった」(学校側)。
しかし、スマホを初期化すればゲームアプリをダウンロードできることを生徒自身が突き止め、無断でゲームをする生徒が続出。中には学校管理のパスワード
を不正入手して課金する生徒や、没頭しすぎて学校を休みがちになる生徒も現れた。保護者からは「なぜ学校が『ゲーム機』を渡すのか」と苦情も寄せられた。
西泰子理事長は「初期化してまでゲームをしようとする生徒がいたのは、想定外だった」と話す。結局、昨年9月に保護者に知らせた上で解約し、従来の携帯
電話に戻した。「正しく使わせることが制携帯に求められる役割だが、学校が管理しきれない以上、戻さざるを得ない」(西理事長)。
他の私立中学・高校でも対応に苦慮しているケースがみられ、「現状のスマホは、学校で管理できない」と“白旗”を上げる教育関係者も出ている。
■授業中にライン
関西のトップ高、灘中学・高校(同市東灘区)でも、授業中に無料通話アプリ「ライン」をする生徒が出てきたため、昨年9月、「授業中は電源を切る」などのルールを決めた。
遠方から通学する生徒も多く、保護者との連絡手段が必要なこともあって、学校側は「生徒たちが使いこなせるように考えていくべきだ」として、学校への持ち込みや、休み時間の使用は認めている。
東大寺学園中学・高校(奈良市)は、「校内では終礼まで携帯電話の電源を切る」ことを決めているが、夜間にライン上で特定の生徒の誹謗中傷が書き込まれ
るネットいじめが昨年発覚。担当者は「苦慮している」と話す。今年3月には、春から中学に入学予定の保護者に「スマホを買い与える際は利便性と危険性を親
子で話し合ってほしい」との文書を配布、授業時間などに啓発を行っているという。
内閣府のインターネット利用環境実態調査によると、携帯電話を所有する中学生のスマホ所有率は平成22年の2・6%から25年に49・6%に上昇。高校生になると10人に8人以上、83・4%が所有している。
スマホアプリの監視システムなどを研究している大阪経済大学の中村健二准教授(情報学)は「深刻なネットいじめなどの問題もあり、スマホを規制するのではなく、学校が、生徒を見守る仕組みをつくっていくことが一番いい対策だと思う」と話している。
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