2014年7月22日火曜日

3D印刷“個人メーカー”続々 家電も視野、数年内に量産化

3D(3次元)プリンターを活用した“個人メーカー”が続々誕生している。これに伴いインターネット経由で受け取った3Dデータを基に製品を出力し、サイ ト上で販売するサービスが相次ぎ出現。利用者が1万人近くに達するサービスも出てきた。今はアクセサリーや雑貨が中心だが、数年内には多様な素材の精巧な 製品を数百万個単位で量産可能となり、家電の“印刷”なども視野に入る。拳銃が造れるなど課題を抱えながらも「モノ作り革命」の潮流は加速度を増してき た。

 「短期間で製品化でき、地産地消で配送コストも削減できる。在庫もなく、リスクは極めて低い。製造業がIT(情報技術)サービス業と変わらなくなる」。 3Dプリントサービス「rinkak(リンカク)」を運営するカブク(東京都渋谷区)の稲田雅彦最高経営責任者(CEO)はこう指摘。その上で、今後はモ ノ作りがソフトウエアを作る感覚に近づき、参入が難しかった製造業に個人やベンチャーの進出が急増すると予想した。

 リンカクは3Dの設計データをネット経由で受け付けると、瞬時に製作可能か判断するとともに原価計算し、利益を乗せた価格を設定。注文を受ければ、国内に数カ所ある提携3Dプリンター工場のうち、購入者に最も近い工場で製品を出力し、配送まで手配する。

 素材は樹脂、陶器、鉄のほか金にも対応。1個から製造できる。利益の3割をカブクが手数料として受け取る。サービス開始から半年程度だが、稲田氏による と登録者は1万人弱、販売した製品は数千に達した。現在はCAD(コンピューター利用設計システム)などを扱う人が中心だが、「DIYを含めた日本のクリ エイター層300万人に広げたい」(稲田氏)考えだ。簡単に3Dデータを作成できるソフトも提供する。

 現在販売しているのはアクセサリーやフィギュア(人形)、立体アート作品、スマートフォン(高機能携帯電話)ケースなどの雑貨、地図の模型など。在庫が不要なため商品の種類はいくらでも増やせる。「雑貨では複数売れるものも出てきた」(稲田氏)という。

 3Dプリントサービスでは、デジタルコンテンツ(情報の内容)配信を手がけるDMM.com(ディーエムエム・ドットコム、東京都渋谷区)が先行して昨 年7月に開始。3Dプリント事業部長の白井秀範氏によると、5月時点で「依頼件数が月5900件、出力数が月2300件に達した」。海外では月20万件近 く出力する事業者もあり、DMMとしては「当面は1万件を目指す」(白井氏)考えだ。

 両社以外にも新たなサービスが相次ぎ立ち上がっている。利用者も個人に加え、企業が事業に本格活用する動きも目立ってきた。DMMは9月、東京・秋葉原に3Dプリンターを導入した大規模な拠点を設置。製品の試作を低コストでできるようにして中小製造業を支援する。

 試作だけでなく、海外では米ゼネラル・エレクトリック(GE)が3Dプリンター工場を設け航空機部品の量産を開始した。バッグや靴、時計を3Dプリン ターで生産・販売する例も出ている。日本でも「電子回路のプリントも可能。独自の家電生産の検討も始まった。2~3年内に数百万個の量産もできる」(稲田 氏)と言い、家電を量産するベンチャーの出現が間近だ。

 3Dプリンターは、流通も大きく変える可能性を秘める。和風の陶器や雑貨の注文を海外から受け、現地の工場で出力して届けることができれば、輸送コスト が省ける。リンカクでは英語の販売サイトもあり、「海外の工場との提携も進めている」(稲田氏)とし、これを「地産地消」と表現する。

 ただ、普及に伴い課題も顕在化してきた。ネットから設計データをダウンロードし、実際に発射できる拳銃を3Dプリンターで造った事件が5月に発生。今月に入り、女性器を造形して出力できるデータを頒布したとして芸術家が逮捕される事件も起きた。

 こうした動きに、3Dプリンターを届け出制や登録制にして所持に規制をかけようという声が上がっている。また違法な物を作れないように制限するソフトウエアを作るなどの取り組みも出ている。

 しかし、国内で3Dプリンターの開発・生産を20年以上前から手がけるアスペクト(東京都稲城市)の早野誠治社長は「3Dプリンターでなくても拳銃は造ることができる。規制しても確信犯は防げない」と規制に否定的な考えを示す。

 3Dプリンターの普及を振興する経済産業省も「(制度的な)対応は検討中。だが、銃刀法やわいせつ物頒布を取り締まる法律がある」(製造産業局素形材産業室)とし、厳しい規制は念頭にないようだ。

 普及が進めば「著作権問題なども顕在化する可能性もある」(同)。国内と海外大手の日本法人など3Dプリンター事業者11社は6月、「3Dプリンター振 興協議会」を設立。業界としてポスターやステッカーを作って、不正使用をしないよう呼びかけることにした。同協会の代表に就いた早野氏は「強制するより、 倫理観を持ってもらうことが重要」と強調する。

 「2万~3万円でチョコレートの人形が作れるプリンターが出るのも目前。文化が変わる」と早野氏。インターネット、スマホも課題を抱えながら普及していった。同様に3Dプリンターによるモノ作りが身近になる日も近そうだ。

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