2014年7月15日火曜日

狙われた女性たち…「歩きスマホ」は無防備のサイン、犯罪被害も誘発

スマートフォンの画面を見たり、操作しながら移動する「歩きスマホ」。視野が狭くなり、人とぶつかるだけでなく、駅のホームや階段から転落するなどの事故 が全国で相次いでいる。そんな中、歩きスマホの女性が襲われる事件が大阪市内で連続発生した。6月下旬の2日間だけでいずれも20代の女性5人が、手にし ていたスマホを自転車の男にひったくられたのだ。「歩きスマホ=無防備」となっている現状がうかがえる事態で、もはやマナーやエチケットだけの問題ではな く、犯罪被害に直結する問題になっている。

■狙われた女性たち

 一瞬の出来事だった。6月23日午前0時半ごろ、大阪市中央区道頓堀の歩道で、女子大生(20)がスマホでメールしていたところ、自転車の男にスマホをひったくられた。

 約10分後には、現場から約800メートル南西の路上で、女性会社員(22)が後ろから自転車で近づいてきた男に追い抜きざまに手に持っていたスマホを奪われた。女性会社員は仕事帰りで、無料通信アプリ「LINE」で友人と連絡を取っていた。

 さらに、同日午前1時5分ごろにも、浪速区桜川の路上で、アルバイト女性(21)が同じくスマホをひったくられた。23日だけでも3件が発生した。

 事件はこれだけで収まらず、翌24日にも連続発生した。

 24日午前2時20分ごろ、西区北堀江の路上で女性会社員(24)が、その5分後には約1キロ南東の路上で無職女性(23)がそれぞれ後ろから自転車で 近づいてきた男にスマホを奪われた。2人ともスマホを手に持った状態で、女性会社員は携帯電話にイヤホンをつないで音楽を聴いているところだった。

 2日間で5件も発生した歩きスマホの女性を狙ったひったくり事件。いずれも未明に1人で歩いていた若い女性がターゲットになっており、大阪府警は同一犯の可能性があるとみて、窃盗容疑で捜査している。

■指摘されてきた危険性

 スマホの爆発的な普及によって、歩きスマホ問題は突如浮上。関連する事故は全国で多発している。

 東京消防庁が、島などを除く都内で平成22~25年に発生したスマホや携帯電話の関連事故をまとめたところ、計122人が救急搬送され、うち1人は死亡 していたことが判明した。死亡した人は、歩きながら携帯電話を見ており、警報機が鳴っているのに踏切内に入り、電車にはねられた。

 大阪市交通局によると、市営地下鉄御堂筋線淀屋橋駅で昨年10月、10代の少年が携帯電話を操作していてホームから線路に転落し、負傷した。

 駅のホームや踏切での事故だけでなく、街中で歩きスマホの危険を感じている人は多い。ある検索大手企業が今年4月にインターネットで歩きスマホの意識調 査をしたところ、「法律や条例での規制が必要だと思う?」との質問に対し、回答した延べ4万9747人の75%にあたる延べ3万7290人が「必要だと思 う」と答えた。

 こうした実態を受けて、スマホを取り扱う大手通信会社も対策に乗り出している。

 ソフトバンクは5月、歩きスマホ対策のアプリケーションの提供を開始した。このアプリでは、スマホの画面を見ながら歩くと歩行中であることを検知して警告画面を表示。警告画面が表示されている間は、操作ができなくなり、立ち止まると再び操作が可能になる。

 NTTドコモは、ネットで「東京・渋谷のスクランブル交差点で1500人が歩きスマホで横断した」という設定でシミュレーションした動画を公開。446件の衝突と103件の転倒事案が発生するという結果とともに「危険です、歩きスマホ」と呼びかけている。

■痴漢や暴行事案も

 歩きスマホが事故を誘発する危険性はこれまでも指摘されてきたが、今回の連続ひったくりは、歩きスマホが犯罪被害者になる可能性を高めることも示した。 ある捜査関係者は「若い女性というだけでなく、歩きスマホによって視野が狭くなっているため、抵抗されにくいと考えて狙われた可能性がある」と分析し、歩 きスマホが“無防備”のサインになっていることを懸念する。

 また、スマホそのものの商品価値が十分に高いこともあり、これまでも携帯電話販売店に何者かが侵入してスマホが盗まれる事件が全国で発生してきた。今回 のようなひったくりも転売や改造しての使用が目的とみられ、捜査関係者は「店に侵入すると防犯カメラに映ったり、非常ベルが作動する可能性もある。周囲へ の注意力がなくなる歩きスマホのほうが、盗みやすく捕まるリスクも低いと考えたのではないか」と話す。実際、犯行時間が未明だったこともあってか、被害に あった女性の中には犯人の男が乗っていた自転車の色や形も認識できなかった人もいた。

 防犯活動に詳しい立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は「歩きスマホを狙った犯罪はひったくりだけではない。痴漢や暴行など他の路上犯罪の被害者になった事 案も多々ある」と話す。歩きながらスマホを見ないようにするのが最も効果的な対策なのだが、アプリの操作が生活の一部になっている人には、ポケットに入れ たままにしておくのは難しい。小宮教授は「路上でスマホを操作するときは周囲の状況を確認することが大切だ。歩きスマホをしていると犯罪の被害者になりや すいことを自覚し、今いる場所が犯人にとって犯行しやすい場所であるかどうか考えてからスマホを手にするべきだ」と指摘している。(レステルぶろぐ)

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