2014年7月3日木曜日

「新生VAIO」はどんなPCになるのか


ソニーからスピンオフする「VAIO株式会社」が7月1日、船出した。同社の代表取締役・執行役員社長に就任した関取高行氏は、お披露目の記者会見の中で「PCの本質を追究し続ける」と語り、同社が「製品の強み」で戦っていくことを宣言した。

 ただ現状、VAIO株式会社が成功するかどうか、行方を占うのは簡単ではない。同時に「VAIO Pro」「VAIO Fit」ブランドで3機種が発表されたが、完全な新機種ではなく、ソニー時代に発売していたVAIOのうち、短期的に需要が高いモデルに若干の修正を加え たもので、本当の意味での「新生VAIO」ではない。

 言うまでもないことだが、製品で戦う以上、「新生VAIO」がどうなるかが、同社の行方を決める。執行役員副社長の赤羽良介氏も「最初の山をいかに越えるかが問題。そうすれば、色々な可能性が見えてくる」と話す。

■ 新生VAIOの登場はいつか? 

 では、最初の山を越える製品はどのようなもので、いつ出てくるのだろうか。会見でのコメントから、製品の内容と方向性を予想してみよう。

 VAIO株式会社のお披露目会見で、関取社長は、同社の方針を積極的に訴えかけた。だが、それが具体的にどのような製品になるか、ということについて は、驚くほど口が固かった。製品化の時期も「年度末には」「年末には用意したいが……」などと口を濁しており、はっきりとしない。製品で驚きを与えたい、 という前向きな思いと、部材調達や開発などの不確定要素があり明言を避けたい思いの両方があるのだろう。
 だが、同社の置かれた立場を考えると、おのずと答えは見えてくる。まず第1のポイントは、登場するVAIOのラインナップ数は少ないということだ。

 会社としての規模が小さく、狙う台数も「2015年度に30万~35万台」(関取社長)と少ないため、大量のモデルを用意して大量販売する、というモデ ルは採れない。赤羽副社長も「商品ラインナップは必要なものだけに絞る」と明言している。関取社長は新生VAIOの経営方針として、「すべてはできない。 まず捨てるところを決める」と強調。具体的に捨てるのは、「海外市場」(赤羽氏)であり、同社のビジネスモデルは当然、日本国内向けに支持を得られすい特 定の機種だけを作る、というものになる。

 製品ラインナップを絞れば、調達するCPUの種類なども減る。インテル製CPUを採用するのは間違いないが、世の中に広まっている半端なものは選べな い。インテルが最新のプラットフォームを発表するタイミングに合わせて、そのCPUに最適化したラインナップを作るのがベストだ。だとすれば、インテルが 次期プラットフォームの提供を始めると見られている、年末近辺が新機種投入のタイミングと考えるのが自然である。

■ 安いPCからは訣別

 第2のポイントは、高付加価値モデルが中心になる、ということだ。台数を追わない以上、低価格モデルに展開することはあり得ない。「PCは道具としての 真価が問われ始めてる」(関取社長)、「どうしても欲しい、と思わせるものを作り、価値を認めていただく」(赤羽副社長)という言葉からも、それは裏付け られるだろう。

 実際問題、タブレットや低価格パソコンのように、大量の部材を調達して「コストパフォーマンスのよい製品」を作るには、240名で国内市場だけ、という新生VAIOの陣容は小さすぎる。

 第3のポイントは一般消費者ではなくビジネス向けを重視する、という姿勢だ。ソニーのPC事業は、他社と異なり、ほとんどが個人向けだった。法人・ B2B市場向けは全体の10%に満たない。どれだけ比率を伸ばすかについては明言を避けたが、「従来に比べB2B比率を大きく上げる」(赤羽副社長)とい う方針もあり、絞ったラインナップの中に「B2Bで求められるモデル」が入るのは間違いない。だがそれは、数を売る低価格モデルではなく、ある程度付加価 値を認めてくれる顧客向けの製品になるだろう。        

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