タブレット端末が普及するなか、国内の主要量販店におけるPOSデータを集計するBCNの調査では、「Nexus 7」「MeMO Pad」などを擁するASUSが、アップルのシェアを逆転して首位に立ったことが明らかになった。
●上半期首位のASUSと2位のアップルがシェア突出
BCNが発表した2014年上期(2014年1~6月)のタブレットのメーカー別シェアでは、ASUSが38.9%と首位に立ち、アップルをシェアで逆転した。2位アップルのシェアも36.3%で、この2社が突出している。
前年同時期には49.7%とほぼ5割のシェアだったアップルは、今回13.4%もシェアを落としたことになる。今回トップとなったASUSの前年同時期
のシェアは30.9%。2社のシェア合計は、2013年のほうが2014年より5.4%多かったわけで、多少、シェアが各社に分散したと考えられる。
それでも3位は大きく離れてレノボ・ジャパンの6.2%、4位はNECパーソナルコンピュータの2.6%、5位はソニーの2.6%と、3位以下は1桁台のシェアにとどまっているのが分かる。
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同時期の月別シェア推移を見ても、この2社の動きは突出。2014年1月、3月、4月、5月はASUSが、残る2月、6月はアップルが首位を獲得してい
る。また7月についても、7月21日までの3週間では、ASUSの38.9%に対して、アップルが34.2%で、やはり2社に集中している。
特にASUSが高いシェアを獲得したのは、幅広い製品ラインアップがその要因の1つ。GoogleのAndroid 7インチタブレット「Nexus
7」や、Windows
PCとの2イン1タイプで4万円台後半のタブレット「TransBook」、Windows搭載で5万円前後のタブレット「VivoTab
Note」、軽くて価格も2万円前後とコスパの良いAndroidタブレット「MeMO Pad」、3万円台前半で通話もできるファブレット「Fone
Pad」といった豊富な品ぞろえが、ユーザーの選択肢を増やした。今回のシェア首位は、これら全ラインアップのシェアを集約したものなのだ。
●約1万円安くなったNexus 7がコスパで売れた
幅広い製品ラインナップを持つことは、量販店側の販売施策にあわせた製品提案が行いやすいといったことにもつながっている。それを示すのが、機種別シェアで2位と4位に入っているNexus 7の存在だ。
機種別シェアでは第2位に、2年前に発売された「Nexus
7」(16GB・32GBモデル/売価格1万5000円前後~2万円前後)が13.7%で入っており、その次に4位の「Nexus
7」の2013年モデル(16GB・32GBモデル/実売価格2万円前後~3万5000円前後)の7.5%。Nexus
7の2013年モデルは当初3万円前後~4万円前後だったものが平均単価で1万円程度安くなっており、量販店側でもコストパフォーマンスの高さを生かした
販売促進企画を打ち出しやすいといった側面がある。
幅広いラインアップによって、用途や価格帯に合わせた販売提案がしやすいという点が、ASUSノシェアの引き上げにつながっていると言えるだろう。
●Windowsタブレットが売れるも、アップルは安定したシェアを確保
一方、アップルは、30%台半ばで安定したシェアを維持しつづけるのが特徴だ。つまり量販店店頭においては、3台に1台以上はアップルという状況が続いていることになる。
2014年3月は、BCNが調査を開始以来、過去最高のタブレットの販売台数となったが、その中でアップルは35.3%のシェアを維持。4月9日の
Windows
XPのサポート終了に伴う買い替え需要がピークに達したタイミングで、Windows8.1を搭載したタブレットのシェアが若干上昇するといった動きも見
られたが、それでもアップルは存在感を発揮しつづけたわけだ。
●2年前の初代iPad miniもいまだに売れている
また、機種別ランキングでは、2012年発売の初代「iPad
mini」(実売価格2万9800円)が6.9%と高いシェアを獲得している点も注目だ。1機種で6.9%のシェアというのは、実はメーカー別3位のレノ
ボ・ジャパンの6.2%さえも上回る実績。これは初代iPad
miniが、16GB版だけが継続モデルとして残され、その価格が3万円を切る設定でiPadの入門モデルとして適していることも影響しているだろう。機
種別首位の「iPad Air」(16GB~128GBモデル、実売価格4万8800円~9万1800円)の16.0%、3位の第2世代「iPad
mini」(16GB~128GBモデル、実売価格3万8800円~8万1800円)の11.5%に加え、低価格帯をカバーする重要な役割を、初代
iPad miniが担っているともいえる。
なお、BCNの集計では、アップルストアやキャリア系の販売店が含まれていない。これらを加えると、iPadのシェアがもう少し上振れする可能性がありそうだ。
そのほかのメーカーでは、NECパーソナルコンピュータのシェアが上昇傾向にあるのが目立つ。2014年1月には2.9%のシェアだったものが、
2014年6月には6.0%に上昇。2倍にシェアを増やし、3位へと浮上した。NEC・レノボグループとしては10%台のシェアを獲得している。
NECパーソナルコンピュータではこの伸びを、「地方都市でのシェアが高い。操作説明をはじめとして使えるまでサポートする体制が評価されている」と分析している。
●Surfaceが加われば、Windowsタブレットのシェアは20%台へ
一方、OS別のシェアを見てみると、2014年上期はAndroidが46.0%のシェアを獲得。次いでアップルが38.0%となっている。これに対して、Windows 8.1%とWindows 8は合計で15.7%となっている。
Windowsタブレットは今年1月以降、15%台で推移しているものの、なかなかそれ以上にはシェアが高まらない。6月には14.2%と今年に入って
初めて15%を割り込んだ。ただ、このなかには「Surface」が含まれていないことも考慮する必要があり、量販店などの声を聞くと、Surfaceが
加われば20%台に到達するのは間違いなさそうなのだ。
●米国から遅れを取る日本のタブレット普及率
またタブレットの販売台数の成長率こそ鈍化しつつあるが、それでも徐々に拡大傾向にあるのは確かだ。
BCNによれば、初代iPadが発売となった2010年5月の販売台数を1.00とすると、2014年3月の販売台数は10.21と10倍規模に拡大。
2014年6月の販売台数は、前年同月比26.2%増に達している。さらに7月17日に発売となった「Surface Pro
3」は発売初日で初期ロット分を完売。さらに今後もタブレットの新製品が各社から投入される見込みであり、販売に弾みがつく可能性もある。
だが、日本におけるタブレットの普及は、米国に比べても遅れており、それが個人および企業の生産性の差につながるとの指摘もある。NECパーソナルコン
ピュータの試算によると、米国でのタブレット普及率は42%だが、日本はわずか18%だ。日本での普及率を考えれば、まだ成長が鈍化するには、早すぎるだ
ろう。継続的な成長を続けるには、タブレット利用の効果や利便性をもっと積極的に訴求する必要があるのではないだろうか。
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